他人の姿に自分を映す

出会った人、音楽、映画、小説、感じた事記します。

溜まっていたレビュー綴ります3

またまた前回に引き続きレビューを綴ります。

 

alexandrosの『NEW WALL』のレビューです。

 

先日TVを見ていると突然、Blurの「song2」が流れてきた。GAYO!のCMである。この曲は1997年のアルバム『Blur』に収録された曲であり、19年もの月日がたっている。それでも耳にした瞬間、「やっぱり格好いい」と感じた。そして、隣にいたBlurなどこれっぽっちも知らない友人も「この曲いいじゃん。誰が歌ってるか知ってるの?」と聞いてきたのだ。格好いい音楽は、どれほどの年月を通過しても劣化せず人々を魅了する、と実感した日だった。
 では、この2016年の音楽で10年後、20年後、はたまた100年後まで、聴く者を「格好いい」と言わしめる音はあるのだろうか。それは、[Alexandros]『NEW WALL』だ。まず、どうして『NEW WALL』なのかという理由を端的に言うと、誰が聴いても分りやすく格好いいからだ。音楽ファン以外の、普段あまり積極的に音楽を聴かないライトな層の人でも、彼らの姿と音楽は受け入れやすい。小難しい解釈などいらない、誰もが想像するロックバンドらしいロックバンドだからだ。『NEW WALL』は繊細なピアノの音から始まり、豪快で壮大なストリングスとギター・ベース・ドラムのグルーヴがこれ以上ない絶妙なバランスで鳴っている。この釣合いの良さは、彼らの持っている美的センスの高さを証明している。そして何より、サビの解放感と高揚感だ。〈Hello Hello Hello New Wall〉という歌詞は、誰もが一緒に手を上げ叫びたくなる。フェスやライブといったリアルな音楽体験が一般化した今、音と会場が一体化できるかどうかが、時代を先導するバンドの必要条件ではないだろうか。この曲は、その条件を軽々とクリアし、オーディエンスをカタルシスへと誘う。
 「DON’T CLIMB IT. BREAK IT.」。これは、『NEW WALL』のMVの最後に表示される言葉だ。この曲は2016年から出発し、何年もの時代という壁を壊しながら、人々に「格好いい」と言われ続けるであろう、重要な曲だ。