他人の姿に自分を映す

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アイズ ワイド シャット

巨匠スタンリー・キューブリック監督の「アイズ ワイド シャット」を観ました。キューブリック作品ならではの、バッドエンドなのかハッピーエンドなのかわからない結末です。そして、理由のわからない不安に襲われる作品です。彼の遺作でもあります。

トム・クルーズニコール・キッドマンが夫婦役を演じております。二人は実生活でも夫婦でしたが、この作品をきっかけに仲違いしてしまったそうで。映画の内容自体も夫婦の関係に亀裂が入る様子を描いたものなので、色々と想像してしまいます。キューブリックの呪い?なんてことは無いですよね 笑。

 

ニューヨークで暮らす医師のビルとその妻アリスの話です。ある日、ビルはアリスから、「以前旅行に行ったさきで目が合った男の人がいる。彼に求められたら全てを捨てても構わなかった」と突然の告白をされます。それ以降ビルはアリスと彼が愛し合う妄想を抱かずにはいられなくなるのです。そんな中、友人のピアニストが仕事をするという怪しいパーティーに強制的に参加したことから、彼の周りが変化していくというあらすじです。

 

とにかく心が不安になる要素たっぷりです。音楽も色使いもそうですし、ビルが参加する怪しいパーティーは奇妙すぎます。みんなが仮装し仮面をつけているというのも表情が分らず怖いです。パーティーの演出はかなりこだわったと見られます。しかし、そんな不安定で奇妙な映画でも洒落ているのがキューブリック作品です。ライトアップされた街の風景の統一感(ニューヨークの設定ですが撮影はほとんどイギリスだそう)や、女性のヌードも生々しいものではなく芸術的な艶やかさになっています。そこがまた不安要素なのですが…。観終わった後、自分はこの作品ついて考えているつもりなのに、一体何を考えているのかわからない状態になりました。結局、考えようとしても無駄ということではないでしょうか。心に残ったものをそのまましまっておけば、いつか何かの瞬間に自分なりの解釈が見つかる気がします。

 

私たちは、現実のような夢を見て、夢のような現実を生きる。その境目があやふやになる瞬間は誰にだってあるはずだ。夢と現実は、私たちが思っている以上に深くリンクしているものだからだ。

眠っていても現実から逃れられず、起きていても夢から逃れられない。人間とはそういう生き物なのだろう。