他人の姿に自分を映す

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マイ・ブラザー

映画「マイ・ブラザー」を観ました。

 

アメリカの戦争映画はアメリカ側の視点に偏った、アメリカ万歳映画になっているという可能性が高い気がします。最近では「アメリカンスナイパー」が印象的でした。アメリカのすることは全て正しく、それに逆らうものは容赦なく殺してよいと言っているようでもあったからです。逆らう側にも家族がいることや多くの人々が殺されていることは全く無視し、アメリカ人兵士は英雄だと最後まで称えられるストーリーでした。その為、途中途中で苦しくなる部分や戦場の緊迫感は痛いほど伝わってきましたが、結果的にアメリカ万歳、アメリカの戦争を美化した映画だったのかと残念になりました。この事を感じた人は多いようで、ネットでも同じような感想がちらほら出ています。公平さばかりを追求した戦争映画を求めているわけではありませんが、フラットさに欠けたものには批判が集まる。戦争映画はそのさじ加減が難しいのです。

 で、そんな映画だと嫌だなと思いながら「マイ・ブラザー」を見たわけです。この映画はデンマーク映画「ある愛の風景」をリメイクしたものです。結果から言うと、アメリカ万歳感は薄い映画でした。戦場の過酷さや兵士の苦痛よりも、その家族に焦点を当ててものなので、戦場のシーンはあまりありません。母国に残された妻や子供、そして、兵士の兄弟の心情をよりリアルに描いています。戦ったことのない私は兵士よりも、通常の国に残っている家族に共感しやすいのだと改めて感じました。答えの出ない曖昧な感情が蔓延っている映画です。

 

 「アメリカンスナイパー」「マイ・ブラザー」どちらにも共通する点は、戦場に行った兵士の心は平常に戻ることは出来ないということです。相手がどんな人であっても自分の手で人を殺すということは、心が強い弱いなどという事に関係なく人間を狂わすものなのです。今まで自分にはどこか遠い話としてアメリカの戦争映画を観てきましたが、集団的自衛権などの問題が表にでてくると他人事だとは思えなくなりました。自分の国のために戦いたくないなど自己中心的な考えと批判する人もいるようですが、自分の国を守るためなら人を殺してもいいのでしょうか?

人が人を殺すことで、何が生まれるのかということを今一度考え直さなければならないのが今の時代なのです。